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コスタリカ便り(その1)  石井信也 
私が初めて中米エルサルバドル国に派遣されたのが1963年、それ以降 エルサルバドル、コスタリカ、ブラジルで37年間勤務、昨年退職したとたんに脊椎板ヘルニアでダウンし、手術を受けるはめになりました。ゴルフもジョッギングも旅行もできない状況に追い込まれましたが、そのおかげ年中常緑で花が咲いているコスタリカの動植物の写真を撮るようになったのですから、この人生、なにが幸いするか分かりません。
しかも、自然保護国で有名なコスタリカに定住を決めていた運のよさもあります。更には、名古屋にいるコンピューター嫌いの妹が、兄弟のプレッシャーにあがらえずに渋々始めたところ、あれよあれよという間に私たちを追い抜いてHPを開設、私の撮った写真を載せてくれるようになったのが、私のコスタリカのエコロジー遍歴に拍車をかけることになりました。

www.geocities.jp/merry2705/をどうぞ。
また、 コスタリカ生物多様性研究所のウエブにも私の撮った写真が近日中に掲載される予定です。)

コスタリカ便り(その2)  石井信也
国土の面積は 51,100平方kmと小粒ですが、25の国立公園に 財団、民間の指定区域を加えると合計107箇所の自然保護区があり、国土の24.6%にもおよびます。哺乳類は221種、鳥類は830種、両生類は150種、爬虫類は215種、魚類は1,080種が確認されており、昆虫類に至っては、366,000種が生息すると想定され、植物は一万種は固いそうですから(内、ランが1,600種)、私の遍歴もそのさわりをなでているだけにすぎないと思うと、気が遠くなりそうです。
自然保護区の形態も様々で、熱帯霧(雲)林、熱帯雨林、沼沢地森林、常緑森林、乾燥地(savannah)、沼沢地(swamp)、雑木林(scrub)、無樹高原(paramos)と多様性に富んでいますが、圧巻はなんといっても熱帯雨霧林でしょう。

多様性といえば、高度も海抜ゼロから、3800メートルの高峰まであり、そのために低地は乾燥していて常夏(30度以上)、高地は湿気があって常春(18―20度)ですから、生物多様性に最適な条件を整えているゆえんでしょう。

コスタリカ便り(その3)  石井信也
一例をあげると、絶滅の危機に瀕する有名な珍鳥 Quetzal(ケッツァル)は、新大陸発見前にはメキシコからパナマまで幅広く生息していた鳥ですが、高地低地が生息地にないと生き延びられず、農地開拓と森林伐採が進んだ結果、今やコスタリカとガテマラの一部にしか見かけられなくなりました。
好物のアグアカティーヨ(アボカドの一種)の果実時季が高度によって変わるので、アグアカティーヨを求めて移動するのです。もともとはガテマラに沢山生息していたようで、同国の通貨単位は今でもケッツァルですし、国鳥でもある。また、今のメキシコにあった、アステカやマヤ王国の頭飾りにはケッツァルの羽毛が使われていたし、通貨としても使用されていたと言われます。また、有名なTeotihuacan(メキシコ)遺跡には Quetzalcoatl(ケッツァルコアトル)という名の雨の神の像が沢山遺されています。コアトルとはアステカが使っていたNahuat(ナウアット)語で蛇のことで、この神様はケッツァルの羽をまとっています。また、メキシコと中米には Quezaltenangoとか、Quezaltepequeとか、ケッツァルの名前と関係のある地名がいまだに使われているのです。私もここの Monteverde自然公園で見る幸運にめぐまれましたが、すばらしい色をした大きな鳥です。
残念ながら、写真は撮れませんでしたが、今後のひとつのテーマです。

コスタリカ便り(その4)  石井信也
自然保護区を回ってみて感じるのは、とにかく多種多様で奥が深く、荘厳。奥深い原生林の中を歩いていると、実業界での42年間の葛藤のなかでたまった俗界の垢が洗い流される気さえします。そのなかでも、高地の熱帯霧林は年中霧、霞がかかっていて幽玄そのもので、少し歩くと体がびしょびしょに濡れるほどです。
ヤドクガエルはそんな雨林、霧林の落ち葉の下に隠れて棲んでいることが多い。
毒をもっている蛙で確認されているのは、100種類以上いる蛙のなかで、7−8種とも、9−10種とも言われ、希少です。残念なのは、上述の Monteverdeに生息していた Golden toad(黄金のひきがえる)が数年前から見られなくなり、絶滅したのではないかと危惧されていることです。私も見たことがありません。

コスタリカ便り(その5)  石井信也
コスタリカに1600種あるといわれるランは熱帯の海岸では、まずお目にかかれません。
一方、ブロメリアは風通しのいい高地を好むのは事実ですが、低地の熱でも頑張っています。大体は広葉樹に着生していますが、まれには針葉樹や椰子の木にも着生しているし、地面に自生しているのもあり、とにかく多様で、その生命力には感動させるものがあります。しかしながら、生存条件の整わないところでは、生えないし、生えても大きくはならないようで、熱帯カリブ海岸の密生した、風通しのよくない原生林ではまず見かけなかったし(ここの着生植物はシダ系が主)、高地だが乾燥したバルバ火山では数センチの小さいブロメリアがほとんど。首都のサンホセ市の街路樹や、ゴルフ場の木にも健気に着生していますが、さすがに薄汚れて元気がなく、しかも小さい。概して言うと、ブロメリアは何年かに一度だけ咲くのが多いことと、一度咲いた株は二度と咲かないということがあるせいか、桜のように一斉に咲いて豪華絢爛という感じはありません。ここにもブロメリア園や植物園があって、そこで咲くブロメリアは百花繚乱です。手を加え、肥料もやるからでしょう。しかし、原生林の中にいると、Ecosystemの輪に組み込まれた自然のブロメリアなどの草木以上に素晴らしいものはないとの思いを強くします。

コスタリカ便り(その6)  石井信也
酸素が薄かったり、温度が低いせいか、 2,000 メートル以上ある火山や山にいる鳥類は限られていますが、低地の河川や沼沢のあるところには、とにかく色んな鳥がいて、空が明るくなり始める早暁と、夕方になると、餌を求める鳥の飛翔と鳴き声が活発になります。特に黄色い嘴の  Tucan (ツカン)とか、尾が黄色のオロペンドラは50センチもある大きな鳥なので、飛ぶ音も鳴き声も大きくて、迫力があります。オロペンドラの巣に至っては 40 ― 50 メートルもある高い木の枝に1メートルもある大きな袋状の巣が、いくつも風にぶらぶらと揺れている様はユーモラスでもあります。

コスタリカ便り(その7)  石井信也
中央台地はロッキー山脈とアンデス山脈に連なる山脈で、太平洋側と大西洋側は広大な平原となっています。山岳地帯から流れ出る膨大な水量が幾筋もの河川となり、大海に注ぎます。河の流れはゆったりとしていて、小船での河下りは悠久な時の流れそのものです。 Egret  や  Heron  などの水鳥や ワニ、カイマン、亀などが遊んだり、昼寝をするのを目の当たりにすると、自分も自然に還元して行くような気分になります。山小屋の夜は消灯され、聞こえるのは蛙と虫の合唱。そして明け方、まず聞こえるのは 黒いコンゴ猿の遠吠え、続いて鳥の囀り。

コスタリカ便り(その8)  石井信也
一度見たいのが、アメリカひょうとも呼ばれるジャガー(jaguar)ですが、今では限られた地域に数えるほどしか生息しておらず、しかも年々減少しているそうです。ワシントン条約や、国の法律で狩猟を禁止しているにかかわらず、密猟が絶えないのは、貧しい連中がいるだけではなくて、金に貪欲な連中がおり、その毛皮をほしがる人間が今でも先進国にいるからです。わにやカイマンの密猟も絶えません。

自然保護区も森林伐採で年々侵食される傾向にあります。先進国で カオバ(マホガニー)などの良質な木材の需要があることと、農牧場開発が進行しているからです。例えば、牛肉はほとんどがアメリカへ輸出され、先進国の需要は増大していきますから、牧場開発のために木は切り倒されます。また、バナナをヨーロッパとアメリカへ輸出するために、広大な森林が丸裸にされたのみならず、農薬による公害が深刻です。ですから、生産者のみならず、先進国の消費者の節度が要求されるわけです。

自然保護国のコスタリカでさえ、こういう問題を抱えているのですから、自然保護のマインドが低い他の中南米国ではおして知るべしです。日本も含めた先進国の消費構造とマインドを変えていかないと、地球上の Ecosystem の破壊が更に進み、空気と水の汚染が深刻化するでしょう。

現在はネオリベラリズムの時代で、人間の闘争心と競争心と欲望を煽っていますが、これに歯止めをかけないと地球の破壊がどんどん進むことが、コスタリカのような自然保護国にいると、なおさら実感できます。一人一人の力はしれていますが、なにか貢献できることはないか日々思案しておるようなわけです。
 
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