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第11話 運転免許が欲しい その5
 「違う!ゆっくりクラッチをつなぐ。クラッチがめげるぞ!」
やっとの思いで取った仮免許証を大事にお財布の中にしまい、毎週末、主人に助手席に座ってもらい、ハンドルさばきも軽やかに、夫婦仲良くスイスイ運転練習・・・なんて甘かった。

 「日本の教習所はこんなに甘くないぞ。」「日本の教習所なんて知らないわよ。口で言われたってわかんないわよ」「運動神経は僕より良いのではないのか?どけ、よ〜く見ろよ」何度夫婦喧嘩をしたでしょう。言われた通りにしているつもりなのに、発進のたんびに「ガクガク、ガガガガガ」と、鞭打ちになってしまいそう。「運転練習中」なんて看板をつけるシステムもなく、いきなり一般道路に「どうにでもなれ!」とばかりに、「まな板の鯉」のごとく、我が身と主人の安全を天に任せて住宅街で練習。いたるところに「ALTO−アルト=STOP」の標識。そのたびに止まり、発進、鞭打ち状首振りを繰り返し、「こんなはずじゃないのに・・・」と、またまた落ち込む私。

 家の近くに国内線の小さな飛行場があり、そこへの往復は格好の練習場。ところが、対向車としてバスが来たりすると「怖い、バスってこんなに大きかったかしら?」歩道など無いのに人が歩いている。「おばあちゃん、こっちに来ないで〜」来るわけ無いのに、接近してくるように見える。カーブを曲がる時、左手でハンドルを回しながら、右手でギアチェンジなんてできないわよ。

 「あれ?今、私はどのギアで走っているの?」今からすると何てことは無いことでも、冷や汗をかきながらやっていました。

 何しろ、普通に車が走っている場所だし、タクシーがウインカーも出さずに止まったり、人が横切ったり、オートバイがスレスレに横を走ったり、事故現場を見たり。右にウインカーを出しているのに、直進していく車を見て、「ウインカーは信用しない。タイヤがその方向に向くまで信用しない。」 前の車がウインカーも出さずに徐行したら、止まるか曲がると思って近づかない。日本ではとても考えられない、コスタリカ式運転マナーを体で覚えました。でも、他の国の運転事情を知っている人に言わせれば、コスタリカはまだましとのこと。ここで練習ができるのはとてもよいことだそうで、いつものごとく、励ましの言葉を友人からいただきながら、発進の練習に日々励むオバサンでした。

 余談ですが、もう一つ女性ならではの運転マナーを習得。合流地点で入れてもらいたい時、女性ドライバーは大抵無視か、気付いても入れてくれないので、男性ドライバーに「お願い」と手信号を出し、プラス、「思いっきり爽やか笑顔」をプレゼント。すると、どんなに込んでいてもまず入れてくれます。そして、必ず「グラシャス」と意思表示を忘れずに。

つづく

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