ホームへ戻る


第19話 ・・・も、また楽し −その1−停電
 コスタリカに来る前、停電と断水が頻繁にあると聞かされていた。文明社会ではどちらが欠けても不便なもの。「困ったな」と思ったものだが、聞かされていたほど私が住んでいる地域は、断水は少ない。停電は何が原因なのかわからないが、昼夜に関係なく起こり、あっても数分後に復旧することが多く、料理もできずに困ったというのは、この6年間で回数はそんなに無い。仕事上、日中数時間も停電でPCが使えず閉口している人もいるが、長く住むとこの不便にも慣れてくる。

 こちらの停電は、自分の家の周りだけでなく、かなり広範囲にわたって停電になるので、夜はみごとに真っ暗となる。それまで路上駐車していた車も、犯罪が増えるからか、不思議とあとかたもなく消えてしまう。信号も当然ながら消えてしまうので、運転には超慎重さが要求される。来た時はまだ小学生だった子供たちは、怖がるかと思ったがその逆で、用意してある懐中電灯を手探りで見つけては、「家の中探検」と言いながらいつもとは違った光景を楽しんでくれた。

 停電のあったある日、庭の方を見てみると家の中とは対照的に白々と明るい。出てみると、空にはまん丸のお月様だけが真っ暗闇に光を放っているではありませんか。「月光」とはこんなにも白く明るいものだったのだと、忘れていた情景を思い出した瞬間でした。と同時に、想像力たくましい私の前に突然現れた坂本竜馬。彼を亡き者にしようと現れた辻斬りに、自分の姿をはっきり見せないように月を背にし、近眼の彼が目を細めながら、「おい、もう刀を振り回す時代ではないぞ」と説教を垂れたりして。

 と、そこへ「月の砂漠♪」が流れ、月光下の砂漠を数匹のラクダとそれに乗って旅をしている「三蔵法師」とその仲間たちが現れ、また、「砂漠」「ピラミッド」「ツタンカーメン」と、どんどん月光の魔法にでも掛かったように、いろんな画面がネガフィルムを見ているみたいに次から次へと現れ、夢心地な気分をしばし楽しみました。パッと人工の明かりが点き、竜馬が、三蔵法師がサーッと消えてしまった時は、何だかとても損した気分。

 ふと我に返って見上げた空には、電気の光に圧されて一回り小さく見える満月が所在なげに光っていた。こんな経験をすると、こちらに来る前に抱いた「停電」の不便さは何処へやら。確率としては少ないが、どうせ停電になるなら、雲の無い満月の夜になって欲しいもの。

停電もまた楽しきかな。

a day in the life 目次へ
 
日本人会の紹介
イベントカレンダー
コスタリカ安全情報
コスタリカの概要
生活情報広場Orquidea
オススメ観光地
スペイン語講座
コスタリカ在住者
コスタリカ旅行記
リンク
コミュニティ掲示板

©Asociacion de Japoneses en Costa Rica All rights reserved.