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第26話 Un Mercado improvisado
(ウン メルカド インプロビサド)――― 即席市場(いちば) その1
 ちゃんとした店舗を出していなくて、車で移動中の人をターゲットにした商売が、ここコスタリカにはある。車の中から買い物ができるから、運転中の人にも「あ、ちょうどよかった」なんてこともあるのではないだろうか。「開いていてよかった・・・」ではないが、「彼らがいてよかった・・・」

 彼らは、車がたくさん通るメイン通りの信号にいることが多いが、ショッピングモールのそば、高速料金所、空港の近く、リゾート地に向かう途中などにもいる。車から手招きして呼ぶ人、クラクションを鳴らして気付かせる人。慣れると意外や簡単な買い物スポットだ。信号で車が止まれば、商品を両手いっぱいにぶら下げてやってくる。例えば、早朝は新聞売りが待機していて、定価で売っている。その人たちの後には、日中、野菜、果物売りが来る。今は500コロンでメロン3個、みかん(マンダリン)一袋、大きなピーマン(チレ・ドゥルセ)、マンゴやレモンも一袋単位で売っている。必ず通るモール前の信号で、一度みかんを買ってみたらとても美味しかった。それから常連となって、私の車を見るとニコニコしておじさんが近づいてくる。 “Holla! Reina.(こんにちは、女王様)メロンも美味しいよ。”

 自分の農場で収穫したものを売っているのか、その辺はわからないが、近くにかなり古いミニトラックを駐車していて、家族ぐるみで行商しているように見える。法的に認められているのか、場所代を払っているのか、警察に許可を出しているのかどうか、その必要があるのかもわからない。何しろ、信号が変わるまでのわずかな時間で、商品の売買を行うから世間話はできない。場所が場所なので、客の方も車から降りることはできない。その場所、その場所にいつも同じメンバーが信号の所で立って、車が止まると「メロン、ピーマン・・・いらないかい?」と近づいてくる。他の場所で売られている、切った果物をビニール袋に入れているものは、衛生的に疑わしく、私などはとても食べたいとは思わない代物もある。日射病にならないのかと思うほど、暑い炎天下の中、彼らは毎日毎日、その日仕入れた商品(と思う)をぶら下げて、車が止まるたびに近づいてくる。他にも、路肩などに棚を設けて、果物などを陳列して本人は木陰に座っているという横着な人もいるけど。

 夕方から夜になると、今度は「花売り」の登場だ。「花売り」と言っても、エプロン姿の美しい娘さんではなくて、男性が、しかもあまり綺麗とはいえない風体の人が、既に花束にした製品を数束持って車に近づいてくる。これから会いに行く「ノビア=ガールフレンド」または「エスポサ=奥さん」にプレゼントする男性をねらっているのだろうか。いただく側としては、そんな既製品ではなくて、花屋で自分のことを考えながら、「彼女にはこの花が似合うなー。」なんて思いながら、選んで欲しいけど、買ってきてくれるだけでもいいのかも。

 このように、自分達の商品を売っているのならいいのだが、盗品ではないかしら?と思ってしまう物も売り歩いている。大判の発砲スチロールの板に、上手にいろんなタイプのサングラスを刺している人、携帯電話のカバー(黒しかコスタリカでは売っていない)や車用充電器をTシャツにビッシリくっつけぶら下げて歩いている人。駐車時の直射日光から車内を守る銀色の幕、ハンドル用カバーや車付属用品を持ち歩いている人。ガム、ボールペン、小さい蛍光灯等を売っている子供。盗品ではないと思うのだが、本当に自分達で仕入れたものなのか、チョッと疑わしい。野菜、果物を買っている人はよく見るが、それ以外の商品を車内から買っている人は今だ見たことが無い。

つづく

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