おしゃべり。
電話の時だけでなく、常に彼女は話している。普段の自分の不満、体調がきついことなど話しながら治療をする。私がわかっているかどうかなどおかまいなく、メイドへの不満、葬式に掛かるお金のことなどを、私の歯を削っている治療器具を振り回しながら話してくれる。スペイン語のヒアリング力アップになる、と必死に聞くのだが、これまた早口で、一方的な会話で終わってしまう。
レントゲン写真を撮った時のこと。フイルムを歯に当て、人差し指で抑えるように言われ、レントゲンの筒のようなものを頬に当てたところまではよかった。日本ならそこで「動かないで下さい」と言われるはず。
アリシラは、「あ、妊娠してないわよね。」
動いてはいけないことを知っている私は、それでも返事をしなければと思い、顔は動かせないし、口はあいているわで、「アグググ・・・」と何とも言えないうめき声を発したのだが、それが終わる前に彼女はレントゲンのボタンを押した。返事を聞く前にボタンを押すなら、何で聞いたのかしら。年齢的に妊娠はしていないだろうが、一応確認をと思っただけなのか。
BGMにラジオをかけている。気に入った曲が流れると歌いだす。サルサやメレンゲがかかると踊りだす。「ねー、今度踊りに行きましょうよ。」(もちろん、うれしいお誘いだわ。でも、まだ実現していない)。
つづく |