ことの発端は、ある広告の写真からだった。
サッカーのコスタリカ・ナショナルチームがワールドカップ出場を決めた後の、昨年10月、某大手スーパーマーケットがセールスプロモーションとして、コスタリカチームがプレーする予定の韓国か日本への航空券、宿泊、観戦チケット一式を抽選でプレゼントするという広告を出し始めた。
その広告は、「Japon Korea 2002(日本 韓国)」と書かれているのだが、写真は日本のものばかり。また、書かれている文字は、「愛、寿、夢」の3文字のみで韓国語はない。まだまだアジアについて勉強不足の観を呈するのだが、なかなか美しい宣伝紙面ではあった。ところが、それに載っていた女性モデルの顔写真がいけなかった。にっこり笑った魅力的な唇の間からは、白く整った美しい歯が見えている。もちろん鼻も、高すぎず低からず美しい。しかし、その上が良くない。両目の端を人差し指で吊り上げているのだ。このポーズは、コスタリカ人がジェスチャーでアジア人のことを表現するのによく使う。コスタリカ人と話している時、私に対してではなくても、アジア人のことを話しながら「目を吊り上げるポーズ」をされると、私も良い気持ちはしなかった。
この「女性の吊り目写真」は、テレビ、新聞など、いろんな所で見られた。私は、この写真を初めて見た時「こんなことがこの国ではまだ許されるのか」と、怒りを覚えるより、どちらかというと呆れてしまった。なんて遅れた国なのか。先進国でこのようなことをすれば、人種差別でこのスーパーは訴えられてもおかしくないはず。私はただそう思っただけだったが、彼女は行動を起こした。
彼女、M女史は、子供の時、中国から親と共にコスタリカに移住してきた、レストラン経営者。彼女は、アジア人社会に連絡を取り、それぞれの代表の署名入り抗議書をそのスーパーに手渡すため、私達のところにもコンタクトしてきた。その文面はとてもわかりやすいもので、最後に、この「吊り目」写真を使った印刷媒体やTVの広告宣伝を即刻止めることと、アジア人社会への謝罪広告を出すことを要求していた。
M女史、会った時に開口一番、
「今の国際社会で、コスタリカ人が、今だにこんなことをしていてはいけない。これからのコスタリカを担ってゆく子供達に大人がこんなことを見せ、許していてはいけないと思わない?」
つづく |