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第34話 Asiatico アシアティコ(アジア人) その3
 仰せごもっともと、ただただ感心し、自分の意見をまとめないまま、待ち合わせ当日、サンホセ中心街にあるそのスーパーの本社に向かった。

参加したアジア人計6人に対し、スーパー側は1人。最初から低姿勢だった。 M女史はニコニコと笑顔を絶やさず、まず、スーパー代表者に会合の機会を作ってくれたことに対しお礼を言ったかと思ったら、いきなり“バン!”と机を叩き、
「私がコスタリカに来て初めて学校に行った時、名前を聞かれたので教えたら、“チンチョンチャンチョン、チニ−タ、チニ−タ”と言いながら、皆が両目を吊り上げて私を馬鹿にした。泣きながら家に帰った私は、親に名前を変えて!とせがんだ。」と、自分の体験談を語り始めた。

私の子供は、コスタリカ人を始めラテン系も多いアメリカンスクールに行っているので、路上では「チノ、チナ」と言われても、幸い、学校でそのようなことを言われ辛い思いをしたことは無かったので、M女史ほど悩んだことは無かったのだけど。

私達は路上で「チノ」と言われても聞き流せるが、M女史のように、まだ小さい時に言葉もわからず、ただでさえ新しい環境に戸惑い、これからの生活に期待と不安で一杯だった時に、クラスメートにそのようなことを言われてからかわれ、どんなに辛かったであろうか。と想像はできても、その時のM女史の表情から自分の考えが甘かったことを気付かされ、何も用意せずにこの場にいる自分が恥かしくなった。その後は、私は他の人が二言三言言ったことに頷くだけだった。スーパー側と言えば、多少の弁明はしていたが、M女史の論理的な進め方にただただ脱帽といった感じで、会合はスムーズに進んで終わった。

M女史は、子供の頃の辛い経験を今の今までずっと心の中に秘め、いつかこのコスタリカでのアジア人に対する悪い習慣を辞めさせたいと、機会を窺っていたのではないだろうか。会合の後、またいつもの穏やかなニコニコ笑顔に戻った彼女の顔を見ながら、この会合が有意義な結果を生んでくれればと願いながら帰途についた。

つづく
 

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